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事業承継コンサルティング
顧問Kの承継心得帖

オーナー企業社長の財産分割の考え方

事業承継のコンサルを長年やっておりますと、前回コラムで述べました事例のように”後継者だけが先代の財産相続で得をしている”というような不満を、その他の兄弟姉妹が抱いているケースが多いように感じます。今回はそのような事態にならないよう、親としてどのような考え方で財産を子どもたちに引き継いでいけばよいのか、私が考えるところをご紹介したいと思います。

最近では相続に関する書籍やTV番組での特集もよく目にします。高齢化社会により一層の増加が予想される相続問題を見越し、法定相続分や遺留分の解説が多くされています。その為、相続財産の分け方については法定相続割合そのもので考えておられる方も多いのではないでしょうか。この法定相続分は民法900条に定められていますが、これはあくまで指針であり、そうしなければならないというものではありません。実際は遺産分割協議によって自由な割合で財産を分割することが可能です。ただ自由と言われても困ってしまうので、そのあたりも民法で指針が定められています。

遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする。

民法906条

つまり、遺産分割協議においては相続人それぞれの生活状況や職業、年齢などを考慮して決めましょうということであり、オーナー企業社長の財産分割であれば、

  • 会社を守っていく人はだれか
  • 残される父母を誰が面倒を見るのか
  • 会社を引き継ぐ後継者は他の兄弟への配慮

といったあたりが考慮するポイントとなるでしょう。

後継者の場合

会社を引き継ぐ者は、従業員やその家族の生活を背負い、取引先への責任も負うことになります。先代と同様かそれ以上に業績を推移させることができれば何も問題ありませんが、変化の激しい世の中でありそう簡単な話ではないでしょう。一歩間違うと倒産・自己破産に至る危険も大いにあり、いざというときの為にも相応に多くの資産を引き継がせる必要があります。ただ、引き継ぐ資産の大きさは背負う責任に伴うものと理解させると同時に、兄弟姉妹の協力あってこその財産である点も忘れず、もし会社を引き継いだ後に自らの兄弟姉妹が生活に困窮するようなら助け舟をだすよう、常に気を配らせる必要があります。


会社に従事していない他の兄弟姉妹の場合

会社に従事していない他の兄弟姉妹には、会社の資産は個人の資産ではないこと、後継者が相応の財産を引き継ぐのは大きな責任を伴うものであり、単に私腹を肥やす意味合いではないことをしっかりと理解させる必要があります。後継者よりも引き継ぐ財産額が少ないとどうしても法定相続分で平等に分けて欲しいという気持ちがでてくるものですが、民法906条にあるように、財産分割にはそれぞれの状況を考慮する必要があり、数値上での均等分割は平等にみえて実は大変不平等なのです。このあたりはじっくりゆっくりと意思を共有していく必要がある難しいテーマですが、親としては子どもたちが揉めないように、そして特定の子供が将来的に不幸になるようなことがないように慎重に検討する必要があるでしょう。

オーナーの皆様は自分が築いた財産をどうしたいと思っておられるでしょうか。もしかすると自分が目を瞑った後、子供達が争うことなく処理するはずで自分が特に考える必要はないと思っておられるかもしれません。また、美田は残さずと考えている方もおられるでしょう。親としては自らが築き上げた資産であり、それをどうするかは極論を言えば自由です。好きにして良いと思います。ただ、資産をどうするのか生前に決めておられなかったことで子供達が揉めるケースは大変多いのです。最低限、家族全員を集めて自分の考えや思いを伝えておくことは、必要なことであると私は思いますが、いかがでしょうか。