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顧問Kの承継心得帖

オーナー家親子の確執

同族オーナー企業で、創業者と二代目が対立することは珍しくありません。最近ですと大塚家具の父娘の対立や赤福の親子対立が各所で報じられるとおりです。またリゾート運営で有名な星野リゾート現代表の星野佳路氏も代替わりの際に激しく親子で支配権を争い、話し合いではなく権力闘争で勝利しての代表就任であったようです。ただ、日本経済新聞出版社発行の『あの同族企業はなぜすごい』にはこう記載されています。

父はトップ交代の取締役会を境に、経営の一線からきっぱり身を引いた。対立を経て経営権が移ると気づいた段階で「会社全体を崩壊させる」方向に進む可能性もあるとみていたが、そうしなかった。「自分の意に沿わないし、頭にきているはずなのになぜか」と思った星野氏は父の姿勢から、世代を超えて経営のバトンを代々受け渡してきた同族企業トップとしての義務感、事業承継を「最後の仕事」とする責任感を知った。

中沢康彦(2017年)『あの同族企業はなぜすごい』日本経済新聞出版社.

対立はしていたもののそれはお互いに会社を思えばこそ、一度方向性が決まれば、先代と対等に対立できるほどの力量を持った後継者を信頼し身を引いた、ということなのでしょう。思い起こせば、私がコンサルティングをさせて頂いていた先も同じ様なことがありました。

とある製造業の会社でしたが、二代目(長男)は創業者(父親)が経営している時代から、自社は旧態依然とした現状では生き残れないと常に危機感を持ち、自社の強みをより活かすべく変革の必要性を強く意識していました。しかしいくら意見進言しようとも、職人気質の父親はそれを受け入れようとはしません。そうこうしている間に時は流れ、創業40年を迎えた時期に二代目が社長に就任、株式も承継されたことを契機に、以前より考えていた効率化策の実施、量産体制の見直し、研究開発部の設立等改革を次々と実行に移しました。ただ、長年に渡り意見が通らなかった鬱憤からか、父親とは口も聞かず、極めつけは父親が本社の門前に植えた桜の木を、本社改装時に気に入らないと伐採するなど、並々ならぬエネルギーでもって改革を推進しておられました。

なかなか過激な2代目でしたが、業績は上向き会社は好調で、常に変化を恐れず進取の気性を持つことが重要な企業にとって、この方は後継者として適任なのだなと思ったことを覚えています。残念ながら60才過ぎで急死され、今は3代目が会社を率いておられます。創業者にとっては社長退任後、息子とは口も聞かず、自分の植えた木も切られてしまうなど、普通に考えれば面白くなかったはずですが、株式は潔く2代目に承継しておられることや社長退任時に自分の周りを固めていた古参役員も一緒に辞めていること、2代目に承継してからは一切経営に口出ししていないことをみると、星野リゾートの先代さんと同じように引き継ぐからには息子を信頼し、最悪の場合は会社が傾いてもやむなしと腹をくくれる度量の大きな人物であったのだと思います。